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2024.10.30
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研究開発税制について

1.研究開発税制の全体像

研究開発税制とは、日本の企業が研究開発投資を行う際に適用される税額控除制度であり、法人税額から一定の割合を控除できる仕組みを指します。この制度は、企業が研究開発を通じてイノベーションを促進し、経済成長を支えるために重要な役割を果たしています。本記事では、研究開発税制の全体像や、具体的な控除内容、令和5年度および6年度の税制改正についてわかりやすく説明します。読者の皆様がこの制度のメリットや活用方法を理解し、自社の研究開発活動をより一層活性化する手助けとなることを目的としています。

1-1.研究開発税制の具体的内容

この制度は、民間企業が研究開発投資を行う際、その費用の一部を法人税額から税額控除できる「研究開発税制」です。具体的には、研究開発投資額の一定割合を控除できる仕組みで、一般型では法人税額の最大25%まで、オープンイノベーション型では最大30%まで控除可能です。対象となるのは、企業が行う研究開発活動で、特にスタートアップ企業や大学との共同研究を行う場合には、より高い控除率が適用されます。特に、革新的な新製品やサービスを生み出したい企業様にとっては、研究開発のコストを軽減できる大きなメリットがあります。この制度を活用することで、企業の研究開発への投資が促進され、結果的にイノベーションの創出に寄与することが期待されています。

2.研究開発税制のメリット

2-1.企業の税負担を軽減する

研究開発税制は、企業が行う研究開発投資の一定割合を法人税から控除できる制度です。これにより、実際の税負担が軽減され、企業はその分を他の投資や人材育成に回すことができます。特に、中小企業においては、税額控除の上限が引き上げられるため、より一層の資金繰りが楽になるでしょう。これにより、企業は研究開発活動を促進しやすくなります。

2-2.オープンイノベーションの促進

この制度は、大学やスタートアップとの共同研究に対する高い控除率も提供しています。オープンイノベーション型の控除では、共同研究費用の一定割合が法人税から控除可能です。これにより、企業は外部の知見を活用しやすくなり、革新的な技術やアイデアを取り入れることで競争力を高めることができます。

2-3.高度な研究人材の獲得を支援

研究開発税制では、高度研究人材(博士号取得者や外部で一定のキャリアを持つ人材)の採用に対しても税額控除が適用されます。新規高度研究業務従事者に対する人件費の20%を税額控除できるため、企業は優れた人材を確保しやすくなります。この制度を活用することで、より質の高い研究開発が行えるようになり、企業の研究開発力が向上します。

2-4.社会課題の解決に貢献

研究開発投資は、感染症、地球温暖化、安全保障など、さまざまな社会課題の解決に直結しています。研究開発税制を活用することで、企業はこれらの課題に対する解決策を模索するための投資を行いやすくなります。結果として、企業は社会的責任を果たすだけでなく、持続可能な成長を実現するための基盤を築くことができるのです。

2-5.経済成長のエンジンとなる

最終的には、研究開発投資は経済成長のエンジンとなります。企業が研究開発に対する投資を増やすことで、新しい製品やサービスの創出が促進され、雇用の創出にもつながります。研究開発税制は、こうした良循環を生み出すための重要な制度であり、日本全体の経済の活性化に寄与することが期待されています。これらのメリットを活用し、企業は積極的に研究開発に取り組むことで、成長と社会貢献を同時に実現することができるのです。

3.制度の注意点とリスク

3-1.申請手続きの複雑さ

研究開発税制を利用する際には、各種の申請書類や証明書を準備する必要があります。特にオープンイノベーション型を利用する場合、スタートアップとの共同研究について経済産業省からの証明書を取得する手続きが必要です。このプロセスは複雑で、書類不備や手続きの遅れが生じると、税額控除を受けられないリスクがあります。

3-2.適用要件の厳格性

研究開発税制には、適用を受けるための詳細な要件が設定されています。例えば、高度研究人材の活用に関する税額控除を受けるためには、新規高度研究業務従事者に対する人件費の割合が前年と比べて増加している必要があります。この要件を満たさない場合、控除が受けられないだけでなく、過去の適用に関する見直しを求められる可能性もあります。

3-3.国外事業所の費用除外

令和7年度からは、試験研究費の範囲から国外事業所等を通じて行う研究開発に係る費用が除外されます。これにより、海外での研究開発活動に対する税制の支援が制限されるため、国際的な事業展開を考えている企業にとっては注意が必要です。

3-4.競争環境の変化

他国でも同様の税制優遇措置が拡充されている中、日本の制度が競争力を維持できるかどうかは不透明です。特に、研究開発投資が経済成長に不可欠とされる中で、日本だけが後れを取ることは、企業の国際競争力に影響を及ぼす可能性があります。

3-5.申告内容の変更リスク

税務申告後に研究開発投資に関する内容に変更が生じた場合、経済産業大臣への変更証明書交付申請が必要です。この手続きが適切に行われない場合、過去の適用に対する見直しが求められ、最悪の場合は不適用とされるリスクがあります。

これらの注意点を十分に理解し、事前に計画を立てることが、制度の活用を成功に導くために重要です。

4.申請の流れ

研究開発税制を利用するための手順を以下に示します。各ステップを順を追って説明しますので、初めて利用する方でもスムーズに申請ができるようになります。

4-1.事前相談

・内容
制度の利用を検討している企業は、まず経済産業省に事前相談を行うことをお勧めします。これは任意ですが、申請の円滑化に役立ちます。

・相談先
地元の経済産業局または経済産業省の技術振興・大学連携推進課にお問い合わせください。

4-2.必要書類の準備

必要な書類

・研究開発計画書
どのような研究開発を行うのか、目的や内容を詳細に記載します。
試験研究費に関する明細書: 試験研究にかかる費用を詳細に記載します。

・経済産業大臣への証明書交付申請書
スタートアップとの共同研究を行う場合に必要です。
その他、法人税額や過去の売上金額を証明するための書類。

4-3.申請の提出

・申請方法
必要書類を整えたら、税務署に税務申告を行います。この際、証明書の写しを添付する必要があります。
共同研究を行うスタートアップの証明書が必要な場合は、経済産業大臣に申請を行います。

4-4.審査プロセス

経済産業省による証明書交付申請の審査は、通常申請から30日以内に結果が通知されます。
税務署に提出した申告書についても、審査が行われ、問題がなければ控除が認められます。

4-5.税額控除の適用

税額控除の実行:
審査が通過した場合、控除額が決定され、次年度の法人税申告時に税額控除が適用されます。
控除額は、申告書に記載した試験研究費に基づいて計算されます。

4-6.事後報告

報告義務:
税務署からの指示に従い、必要に応じて事後報告を行うことがあります。これには、研究開発の進捗状況や成果についての報告が含まれます。

以上の手順を踏むことで、研究開発税制の申請がスムーズに進むことが期待されます。申請にあたっては、各ステップで必要な書類を整え、提出期限を守ることが重要です。詳細なガイドラインや最新の情報については、経済産業省の公式サイトを確認してください。

5.必要書類

研究開発税制の申請を行う際には、以下の書類や情報を準備する必要があります。

・法人税申告書
申請対象となる年度の法人税申告書のコピー

・試験研究費の明細書
試験研究に関連する費用の詳細を記載した明細書。

・研究開発報告書
試験研究の目的、内容、実施期間、成果等をまとめた報告書。

・人件費明細
試験研究に従事した研究者の氏名、役職、実働時間、及び人件費の詳細。

・原材料費及び経費明細
試験研究に使用した原材料や関連経費の詳細情報。

・公募要件を満たしていることを示す書類
試験研究の内容が広く一般に募集されていることを証明する書類。

・新規高度研究業務従事者の証明書
高度研究人材に関する要件を満たしていることを示す書類。

・共同研究契約書(該当する場合)
大学やスタートアップとの共同・委託研究に関する契約書のコピー。

・経済産業省証明書(スタートアップとの共同研究等の場合)
スタートアップと共同研究を行う場合、経済産業大臣からの証明書の写し。

・過去の試験研究費に関する比較試験研究費の額の計算書
比較試験研究費の額を計算するための書類。

これらの書類は、税務申告時に税務署へ提出する必要があります。正確かつ詳細に記載し、必要に応じて追加の書類を求められる場合もあるため、事前に確認して準備することが重要です。

6.まとめ

研究開発税制は、企業が研究開発活動を行う上で非常に重要な制度です。税負担の軽減やオープンイノベーションの促進、高度な研究人材の獲得支援など、多くのメリットを享受できる一方で、申請手続きの複雑さや適用要件の厳格性といった注意点も存在します。これらを十分に理解し、必要な書類を整えた上で、計画的に申請を進めることが成功への鍵となります。自社の研究開発活動を最大限に活かし、成長を目指すために、ぜひ制度を活用してみてください。

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